同種造血幹細胞移植後HPVワクチン

まず一般的なことについて。。

子宮頸がんは2010年日本で罹患者数10737人、死亡者数2737人である。実際には子宮がんの死亡者にも子宮頸がんが含まれている為、死亡者は3000人/年を超えるとされている。若い女性が命を落としうるmiserableな癌である。

子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス(HPV)であると、Harald zur Hausenにより発見された。子宮頸がんの70%がHPV16型と18型が原因である。
その後、HPVワクチンが開発され、ワクチンで予防できる癌となった。

HPVは性交渉で移るが、多くは一時的な感染で癌を発症することはない。一部の女性に持続的な感染を起こし、前駆病変を経て、子宮頸がんを発症する。

日本では2013年4月1日よりHPVワクチンが定期接種となった。
日本ではサーバリックスとガーダシル4が承認されている。サーバリックスは16型と18型の感染を予防する。ガーダシル4は16, 18に加え、6と11もカバーし、コンジローマの予防もできる。
海外にはガーダシル9があり、ガーダシル4の4種類に加え31, 33, 45, 52, 58の感染予防が可能である。

14歳以下では2倍の抗体価上昇を認め、かつsexual debut前でHPV未感染の可能性が高いため、最もよい適応とされているが、sexual debut後もある程度の予防効果があり、26歳まで摂取が推奨されている。
もちろん男性は子宮頸がんは発症しないが、生殖器肛門癌の予防となるため、リスクの高いMSMやHIVなどの免疫抑制状態の男性にも26歳までの摂取が推奨される。

日本ではHPVワクチン摂取後に慢性疼痛、運動障害、記憶障害等が出現したとの報道により、ワクチン摂取が控えられてしまっている。定期接種は強制ではない為、日本の接種率は1%を下回っている。

しかし、それらの症状は医学的に因果関係が説明できていない。7万人の女子を対象としたNagoya studyで、ワクチンを接種していない女性でも同様の症状を訴える人がいることが分かり、ワクチン接種群で多い訳ではないと分かった。現在、ワクチン後の症状は前後関係があっただけで、因果関係ではないと考えられている。身体症状症なのでしょう。

世界中で接種され、有効性、安全性も問題ないワクチンであり、私は打てる人は定期接種のタイミングでHPVワクチンを接種すべきと考えている。でないと日本だけいつまでも子宮頸がんで亡くなる人が減らないという悲しい未来が来てしまう。



さて本題に入る。。。
せっかく癌が予防できるワクチンがあり、同種造血幹細胞移植後の患者は子宮頸がんを含め二次癌のリスクが高い為、HPVワクチンは打つべき症例で勧めていきたいと考えている。

しかし、移植後のHPVワクチンについてはまだevidenceが十分にない。

各ガイドラインでは以下のようになっている。


・日本造血細胞移植学会(2018)
HPVワクチン 随意
国内外での造血細胞移植患者に対するまとまった実施報告例はない。

・ECIL7(2019)
6–12 months after transplantation recommendations for the general population in each country should be followed (B II u
HSCT recipients could develop human papillomavirus-associated tumours, especially in cases of chronic GvHD. Human papillomavirus vaccination is recommended for healthy adolescents or young adults in most countries to prevent human papillomavirus-related malignancies. 20 previously unvaccinated children received three doses of the quadrivalent vaccine 6–12 months after HSCT with only minor adverse events. The seroconversion rate was nearly 100%. Although there is no large-scale data on vaccine efficacy after HSCT, no safety issues are expected and human papillomavirus vaccination should be beneficial in young patients. Whether it is beneficial in older recipients of transplantations remains to be assessed.

・DGHO(2018)
If vaccination against human papilloma virus is indicated, vaccination should be performed regardless of immunosuppression; however, immune-response might be reduced.
No data on the immunogenicity of HPV in SCT recipients exists, but in adolescents and younger adulths, HPV vaccination might be useful(CⅢ)

・IDSA(2013)
Consider administration of 3 doses of HPV vaccine 6-12 months after HSCTfor female patients aged 11-26 years and HPV4 vaccine for males aged 11-26 years(weak, very low)
There are no data regarding vaccination of HSCT recipients with HPV vaccines.

・ASBMT(2009)
ワクチンはOptional
→follow recommendations for general population in each country. No data exist regarding the time after HCT when vaccination can be expected to induce an immune response(CⅢ)
このガイドラインは、移植後の感染予防のガイドラインのためワクチンだけでなく以下の内容まで具体的に書いてあって面白い。
長期にわたる単一パートナーとの関係ではないsexually active患者はsex時にはコンドームを使用し、HPV感染のriskを減らす。(AⅡ)
高度に免疫抑制下にある場合は、oral-genitalも避ける。(CⅢ)


まとめると、"移植後のデータは十分ではないが、移植をしたしないに関わらず、一般的にHPVワクチン摂取が推奨される年齢なら打ったらどうでしょう"ということのようだ。

最近ECIL7で参考文献になっていた免疫不全の子ども達にHPVワクチンを接種したstudyの長期フォローの結果がでた。

Long term follow up of persistence of immunity following quadrivalent Human Papillomavirus (HPV) vaccine in immunocompromised children
MacIntyre CR, et al. Vaccine 2019; 37: 5630-5636

5-18歳の免疫不全の子どもに対して、ガーダシル4を3回接種し、5年フォローしたというstudyである。5年フォローできたのは37人で、その内の20人が造血幹細胞移植後である。
効果としては5年で十分な抗体価が維持されており、この間に重篤な合併症もなかった。


この報告は18歳未満での接種のためそのまま成人にあてはめることはできないが、移植後であってもHPVワクチンの効果はある程度は認めるようである。
私としては現時点では一般的にHPVワクチンが勧められるような26歳以下の女性に対してはガーダシル4の3回接種を勧めていこうと思う。

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